2011年01月17日
静岡酒、この名役者、この名演技1.
静岡地酒研究会の鈴木真弓さんのブログに「WEB酒場 静岡吟醸伝」があります。
静岡吟醸を愛すものたちの静岡吟醸に対するリレーエッセーです。
私も静岡吟醸を愛する一人として静岡酒について書かさせていただいています。
シリーズタイトルもじっくり考えてこれに決めました。
「静岡酒、この名役者、この名演技」
いかがですか?
まずは寄稿した第一作をお読みください。
第1章「静岡吟醸、はじまりの予感」
時代は昭和の終わり頃。
ここは静岡市牧ヶ谷にある静岡県工業技術センターの2階のある小部屋。
私は幾度となく通いつめ、つかみどころない酒の正体を知ろうと躍起になっていた。
酒屋の酒知らずではいられなかったからである。
私を相手にしてくれたのは、素朴で風格のあるこの部屋の主と、もう何日も家に帰って寝ていないような、ぼさぼさ頭の科学者。
お酒の本を貸してもらったり、酒議論を何時間もした。
ある日の昼過ぎにこんなことがあった。
私と、この部屋の主がいつものように酒議論をしている時、ある初老の男性が入ってきた。
喋る口調から静岡人でないことはわかり、これは酒造従事者それも杜氏ではないかと私の気持ちは高ぶった。
ところが入ってきた客の顔を見るなり、部屋の主の顔は硬直し、これまで見たことのない形相になった。 そして、「おい、帰りなさいと」私に退出命令が下された。
私は素直に部屋を出たが、これから何かがはじまるのではないか、人には見られたくない何かが・・・そうだ!よっぽどのことがあるはずだ、と思った私は、廊下で聞き耳を立てて、部屋の隙間をのぞいてみた。
主は言う。「おい、持ってきたか?」「どう、見せてみろ!」と。
初老の男は右手に握っていたあるものをそっと手渡した。
それは麹であった。
やはり男は杜氏であった。
主は手渡された麹をじっくり見て、矢継ぎ早に怒鳴った。
「お前、俺の言うことをちゃんと聞いてやってるのか?」、
「これで満足な大吟醸ができると思っているのか?」、
「これじゃあ、渡せんな!」
・・・息詰まる部屋の空気、私の心臓はもう壊れるくらいの心拍数。
怖くなって、部屋をあとにした。
この後のことはわからない。
しかし、杜氏がもらいにきたのは静岡酵母。
鑑評会に出品するための大吟醸を造るためにほしかったのだろう。
男と男のプライドの対決。その迫力に腰抜けた私だった。
この部屋の壁には日本酒の作り方が絵で紹介されていた。
『開運、土井酒造場寄贈』となっていた。
開運は静岡酵母HD-1の生まれたところであり、開運大吟醸は静岡吟醸の基本となったお手本なのだろう。
後日、私は主にこう切り出した。
「みんなが静岡酵母を使うと、似たり寄ったりになってしまうのではないでしょうか?」。
主はこう答えた。
「酒は酵母だけではない。麹もある」「麹造りが大事なんだよ」と。
更に続けて、
「酒屋だったら、今まで金賞を取ったところ以外の蔵元に力を入れろ、必ず伸びる。俺がそうする」。
主とは河村傳兵衛先生であり、ぼさぼさ頭の科学者はスタッフの大石先生でありました。
静岡吟醸伝は私以外にもたくさんの静岡吟醸を愛する方々が書いています。
是非訪問してみてくださいね。
静岡吟醸を愛すものたちの静岡吟醸に対するリレーエッセーです。
私も静岡吟醸を愛する一人として静岡酒について書かさせていただいています。
シリーズタイトルもじっくり考えてこれに決めました。
「静岡酒、この名役者、この名演技」
いかがですか?
まずは寄稿した第一作をお読みください。
第1章「静岡吟醸、はじまりの予感」
時代は昭和の終わり頃。
ここは静岡市牧ヶ谷にある静岡県工業技術センターの2階のある小部屋。
私は幾度となく通いつめ、つかみどころない酒の正体を知ろうと躍起になっていた。
酒屋の酒知らずではいられなかったからである。
私を相手にしてくれたのは、素朴で風格のあるこの部屋の主と、もう何日も家に帰って寝ていないような、ぼさぼさ頭の科学者。
お酒の本を貸してもらったり、酒議論を何時間もした。
ある日の昼過ぎにこんなことがあった。
私と、この部屋の主がいつものように酒議論をしている時、ある初老の男性が入ってきた。
喋る口調から静岡人でないことはわかり、これは酒造従事者それも杜氏ではないかと私の気持ちは高ぶった。
ところが入ってきた客の顔を見るなり、部屋の主の顔は硬直し、これまで見たことのない形相になった。 そして、「おい、帰りなさいと」私に退出命令が下された。
私は素直に部屋を出たが、これから何かがはじまるのではないか、人には見られたくない何かが・・・そうだ!よっぽどのことがあるはずだ、と思った私は、廊下で聞き耳を立てて、部屋の隙間をのぞいてみた。
主は言う。「おい、持ってきたか?」「どう、見せてみろ!」と。
初老の男は右手に握っていたあるものをそっと手渡した。
それは麹であった。
やはり男は杜氏であった。
主は手渡された麹をじっくり見て、矢継ぎ早に怒鳴った。
「お前、俺の言うことをちゃんと聞いてやってるのか?」、
「これで満足な大吟醸ができると思っているのか?」、
「これじゃあ、渡せんな!」
・・・息詰まる部屋の空気、私の心臓はもう壊れるくらいの心拍数。
怖くなって、部屋をあとにした。
この後のことはわからない。
しかし、杜氏がもらいにきたのは静岡酵母。
鑑評会に出品するための大吟醸を造るためにほしかったのだろう。
男と男のプライドの対決。その迫力に腰抜けた私だった。
この部屋の壁には日本酒の作り方が絵で紹介されていた。
『開運、土井酒造場寄贈』となっていた。
開運は静岡酵母HD-1の生まれたところであり、開運大吟醸は静岡吟醸の基本となったお手本なのだろう。
後日、私は主にこう切り出した。
「みんなが静岡酵母を使うと、似たり寄ったりになってしまうのではないでしょうか?」。
主はこう答えた。
「酒は酵母だけではない。麹もある」「麹造りが大事なんだよ」と。
更に続けて、
「酒屋だったら、今まで金賞を取ったところ以外の蔵元に力を入れろ、必ず伸びる。俺がそうする」。
主とは河村傳兵衛先生であり、ぼさぼさ頭の科学者はスタッフの大石先生でありました。
静岡吟醸伝は私以外にもたくさんの静岡吟醸を愛する方々が書いています。
是非訪問してみてくださいね。
日本酒きき酒テクニック「日本酒の表現方法1.雪解け水のような 」
丸河屋酒店で「酒屋de酒Live3」をやりました。
丸河屋酒店内で酒屋de酒ライブ2を行いました。
焼酎ナビゲーター取得講座開講だよ!
東海大学短期大学部「フードサイエンス」にて講演
フードサイエンス開講迫る!
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Posted by 丸河屋酒店 at 18:26│Comments(2)
│講演・講座・執筆
この記事へのコメント
かなりおもしろかったです♪
河村傳兵衛先生とのエピソードかぁ~。恐れ多いけど羨ましい!笑。
こういうエピソードとか裏話って結構貴重だったり、おもしろいものですよね。
酒屋さん新米の私にはそういうのが乏しい(少ない)わけなんですが、ぜひまた楽しい話を聞かせて下さいませ(^o^)
河村傳兵衛先生とのエピソードかぁ~。恐れ多いけど羨ましい!笑。
こういうエピソードとか裏話って結構貴重だったり、おもしろいものですよね。
酒屋さん新米の私にはそういうのが乏しい(少ない)わけなんですが、ぜひまた楽しい話を聞かせて下さいませ(^o^)
Posted by 鈴木酒店
at 2011年01月17日 19:39

鈴木酒店さんへ、
久々のブログアップ。
お読みいただきありがとうございます。
エピソード = 経験話
確かに貴重ですね。
でも経験ってその時にはそういう価値もわからずに過ぎ去る。
そのときそのときが精一杯ですもんね。
私はこれまで脳に溜まっている事柄を文章化しています。
発散でもあるわけです。
どうぞ、お付き合いくださいね。
久々のブログアップ。
お読みいただきありがとうございます。
エピソード = 経験話
確かに貴重ですね。
でも経験ってその時にはそういう価値もわからずに過ぎ去る。
そのときそのときが精一杯ですもんね。
私はこれまで脳に溜まっている事柄を文章化しています。
発散でもあるわけです。
どうぞ、お付き合いくださいね。
Posted by 丸河屋 at 2011年01月17日 21:34