2011年10月23日

静岡酒、この名役者、この名演技 11.

 しずおか地酒研究会の鈴木真弓さんのWEB酒場静岡吟醸伝に寄稿しています。

 「静岡酒、この名役者、この名演技」の第11章です。

 「歴史に残したい静岡の名酒たち その1.」

 私が酒業界に従事し始めたのが、昭和57年。
 平成23年は昭和に換算すると昭和86年。
 ですから今年で30年目になるわけです。

 30年の中で口にしたお酒の数はいくつか?

 それは数え切れないくらいですし、耳で聞いただけ、
目で見ただけのお酒だってどのくらいあることか。

 こんな星の数ほどのお酒の中から、
歴史に残したい静岡の名酒を選んでみます。


 日本酒の消費量が最大だったのは、高度成長時代の昭和48年。
 私が従事し始めた57年も日本酒は今から考えれば、
嘘のようにたくさん飲まれていました。

 昭和の時代は級別制度があり、2級が普通で1級が上等、
特級は正月くらいしか飲めない代物で金粉入りもありました。

 残念ながら、静岡酒での金粉入りはおぼえがありません。

 当時は私の父も2級を晩酌しつつも、「旨いお酒はYK35だぞ」とか、
「灘の宮水がお酒にとっては名水」と語っていたことを思い出します。

 昭和40年代以前は灘の「剣菱」が幻のお酒として騒がれました。

 その後は佐々木久子さんや深夜番組イレブンPMなどで
散々「越の三梅」を取り上げたこともあり、「越乃寒梅」がブレイク。

 昭和50年代から60年代は「剣菱」にとって代わり、
 「越乃寒梅」が幻のお酒として一世風靡しました。

 この頃の静岡酒は消費者にとっては目立ったことはありませんでしたが、
「満寿一」と「開運」は鑑評会に出品し続け、吟醸つくりに磨きをかけていました。

 そういった努力が功を奏し、静岡酵母からの名酒の誕生となったわけです。

 静岡のお酒が静岡らしく輝き続ける限り、忘れてはいけない原点の名酒は
 「開運 大吟醸」でありましょう。

 開運のお酒を置いてある酒屋はおおけれど、開運大吟醸を買える店となると、
旧静岡市内では山崎酒店(現 ヴィノスヤマザキ)だけでありました。

 これには大きな訳があったわけで、静岡の大吟醸が大ブレイクしたのは、
 「開運」「静岡酵母」「山崎酒店」の夢見る努力があったからであります。

 満寿一とともに吟醸酒造りを一生懸命やってきた開運が河村先生に応えるべく、
もろみを提供し、静岡酵母HD-1の誕生。

 静岡のお酒は灘や伏見の下請け酒屋で、美味しくないとの評判に逆行した山崎巽氏。
 「俺が一生懸命売っていくから、静岡酵母でやってみよう」と何蔵もの姿勢を変えた
原動力のひとつになっていたようです。

 その裏には故静岡県酒造組合専務理事の栗田覚一郎氏の存在がありました。

 栗田さんと山崎さんは同級生であり、これは栗田さんから直接何度もお聞きした、
あるときの酒造組合での場面です。

 山崎氏「全国には旨い地酒がたくさんあるのに、静岡にはないな。」
    「だから静岡のお酒を売っていないんだよ。」

 栗田氏「おいおい、これからは違うぞ。」
    「県の技師が必死になっていてなあ、土井君のところで良い種が見つかったようで、
    それが熊本のよりもいいらしいんだよ。」

 元々全国の地酒専門店であった山崎氏はこの情報をいち早くキャッチし、
静岡県内の蔵元訪問に出たというわけです。

 当時は酒販店が蔵元に出向いて仕入れるということは滅多にないことでありました。
 問屋が力を持っていたからです。

 山崎氏は自分を信じ、静岡の蔵元を信じて、静岡吟醸の拡販に成功しました。


 「蔵元」「県」「酒販店」の三つ巴があったからこそ、今の静岡酒があると思います。



 静岡酒を語る上で忘れてはいけない、ここがスタート。
 原動力の名酒が開運の大吟醸であります。

 自社酵母を県にも譲ってライバル会社(同業者)のために一肌脱いだ
開運の土井酒造場 の懐の深さを味わってほしいと思います。


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Posted by 丸河屋酒店 at 16:30│Comments(0)講演・講座・執筆
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