2008年11月29日

日本酒輸出の落とし穴

日本酒輸出の落とし穴
 日本酒の国内消費量は減り続けている一方で、海外への輸出は堅調とよく報道されます。

 これまでは台湾や香港が主な輸出先でしたが、アメリカやヨーロッパにまで輸出されるようになり、
ここ2年くらいは韓国の勢いがあります。

 日本酒輸出は今後どのような推移を取るのか。
 日本におけるワインのように諸外国に広まり定着していくのか。

 輸出と輸入の数量から、落とし穴がないのか考えてみました。

 輸入量や輸出量の数字は毎年変化するもの。この変化は業界関係者にとっては浮き
沈み。笑ったり泣いたり。ここのところ日本酒輸出については堅調と報道されている
ので、誰もが右肩上がりと認識されていることでしょう。

 では実際にどのくらいの数量の日本酒が輸出されているのだろう。2008年の9月の
数字を拾ってみる。日本酒の課税移出総数量は48,774.3klで前年比99.2%。輸出免税
数量は781.0klで前年比100%。国内の消費量が微減であったのに対して輸出はほとん
ど前年同量であった。

 国内の日本酒全生産量の内、輸出されるのは1.6%。国内消費が落ち込むので、輸
出は横ばいでも数字は伸びることになる。これが日本酒の実態。

 味の素や醤油のように日本酒が広まればどこまでいくのか?

 今や醤油においては、日本の半分の数量がアメリカだけで消費されている。醤油は
テーブル上の調味料の地位を得たことでしょう。お寿司などの和食とともに増大して
いる模様。果てして日本酒もそのようになるのか?

 外国は製造方法や原料についてはうるさい。日本のビールであるスーパードライや
キリンの一番しぼりはビールの棚には置かれず、モルトリカーの棚におかれている。
ビールに似た飲料であるとの扱いを受ける。これは日本の発泡酒に近い扱いだ。

 なぜか?

 それはビールは麦芽とホップが原料であるからだ。日本は麦芽の1/3の量までは副
材料を使ってもビールと許される。

 日本酒も米・米麹の純米酒は日本酒であり、醸造アルコールが添加された大吟醸は
ハードリカー扱いである。飲食店としても醸造酒の販売免許だけでは大吟醸は売るこ
とが出来なく、ウィスキーなどのハードリカー販売免許を取らなくてはならない。

 また、一般的な純米酒は米・米麹と表示してあるものの、実は薬品としての乳酸は
添加されてある。この場合の乳酸は食品添加物の扱いとなる。西洋人には理解し難い
ことらしい。どうして米以外の物も入っているのに純米酒なのかと?

 この点については醸造アルコールの添加されたお酒よりも厳しくする方がいいとの
意見もあり、一般的な純米酒すらリキュールの枠に入れるべきだとの声もある。

 味の素や醤油と違って、日本酒は前途多難だと予測される。日本の表示の仕方を世
界ルールにしなければならないでしょう。

 日本酒の海外輸出の後を追うようにしてきた焼酎。こと単式蒸留焼酎=焼酎乙類
(本格焼酎)はどうであろうか?
 2008年9月の課税移出数量は39,314klで前年比106.6%。輸出免税数量は16.8klで前
年比46.3%と低迷。いったい何が起こっているのか?報道すらされていない。


 今度は逆に輸入の代表であるボージョレーヌーボーの数字をみてみよう。ボージョ
レーヌーボーはその年の出来栄は騒がれるが、輸入した結果の数字はあまり聞かれな
い。解禁後は報道の価値が下がるからであろう。この数字の変化を見ると意外であっ
てびっくりする方も多いでしょう。

 第一次ブームとされる1989年には45万ケース(1ケースは12本)。酒税法改正でワ
インの価格が下がったことと、バブルだったためである。その後は下げてしまう。6
年後の1995年は6万6千ケース、1/7まで落ち込んだ。この落差は日本酒以上に大きい。
日本酒は10年くらいで1/2だからである。

 ボージョレーヌーボーは秋から話題性が大きく、百年に一度の出来と騒がれた2003
年の翌年の2004年はこれまでの天上をつける104万ケースに達した。9年で15倍以上に
なる。

 そこからまた下がりだし、2007年は2006年の70%、今年は2007年の80%となってい
る。今年の数値はこれまでの天上だった2004年の50%となっている。4年で半分まで
落ちてしまったのだ。

 このようにボージョレーヌーボーは浮き沈みが大きい商材である。その割には悲観
的な報道はされない。日本酒の国内消費ががこのような乱高下だったら、ほとんどの
蔵元は壊滅しているかもしれない。そしてこれから先、日本酒が海外消費が増えてい
くにあたり、海外では日本のボージョレーヌーボーのように浮き沈みが大きくなるこ
とも覚悟しなければならないでしょう。

 大きな落とし穴にはまらないでほしいものであります。



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Posted by 丸河屋酒店 at 12:59│Comments(6)日本酒
この記事へのコメント
勉強になりました。
難しいんですね。アルコールの輸出って・・・
日本においてのベルギービールとかも、複雑な記載ですね。
Posted by moto1976 at 2008年12月19日 19:51
 お酒の輸出は明治から始まってます。
 一升瓶が出来て、遠方まで良い状態で運べるようにしたそうです。

 話題になる一方で、話題にしづらいこともあったり。

 ほとんど儲かっていない。
 実より名がほしいのでしょうか。

 そんな中でも、外国で日本酒のスターが誕生してほしいです。
Posted by 喜び一杯 at 2008年12月20日 08:48
参考になります。
なぜ儲からないのですか?
Posted by key at 2009年05月16日 03:33
 >keyさん

 すでに競争が激しくなっていること。

 輸出のための業者がからみ、
 そちらにも利益が分配されること。

 それでも輸出したい気持ち。

 これらだと思われます。
Posted by 丸河屋酒店 at 2009年05月16日 08:45
日本酒を中国やヨーロッパに輸出したいと思います。どのようにすべきか是非教えてください。
Posted by 平松峰男 at 2009年12月15日 07:38
>平松峰男さま、

私は輸出したことがありませんので、
実際にやったことがある方々にお聞きください。
Posted by 丸河屋酒店 at 2009年12月15日 10:43
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    コメント(6)