2011年10月19日

静岡酒、この名役者、この名演技 7.

 しずおか地酒研究会の鈴木真弓さんのWEB酒場静岡吟醸伝に寄稿しています。

 「静岡酒、この名役者、この名演技」の第7章です。

 「静岡酒の新時代は全国の新時代」

 全国・各地の鑑評会で猛威を振るうカプロン酸系の吟醸酒。

 静岡など、イソアミル系(熊本・協会9号系)のタイプに新しい夜明けが来るのか?

 日本酒自体が決められた原料を元に、麹菌と酵母菌に醗酵をさせていく
製造方法であり、これが変わらなければ、香味も変わらない。

 これまでと違ったお米や微生物から作れば香りの成分も変わることもあるでしょう。

 吟醸酒は醗酵由来の香りが主体。
 酵母の違いによって与えられるのは香りの成分のバランス違いと言っても過言ではないでしょう。
 つまり「イソアミル系」と「カプロン酸系」の香りのタイプに大きく2つに分かれます。


 あくまで従来通りの静岡型の「イソアミル系」で勝負していくには、香りの強さだけではなく、
全体のバランスや味わいのきれいさに特徴を出していくべき。

 そもそも静岡酵母開発は香りだけで考案されてきたわけではない。

 静岡酵母を使った静岡型の原点とは何か?

「よ~し、もう一度静岡酵母で勝負していこう!」
「静岡酵母で全国新酒鑑評会で金賞を取ろうではないか。」

 こんな合言葉があったかどうかはわかりません。
 しかし、これまで他の酵母を使って出品していた蔵元たちが、
またもとの静岡酵母に戻って出品しはじめました。

 平成10年代の後半のことであります。

 熊本酵母で作った熊本のお酒が毎年のように金賞を受賞しています。
 同系の静岡酵母で作ったお酒だって、金賞を受賞できるはず。

 実質平成23年の全国においては、金賞は開運が唯一。
 これまでだったら、なんだあ、たったの一つか。
 と見切っていたかもしれません。

 でも今は一つでもが雄たけびであります。


 全国ではなく、静岡県内に目を向けてみましょう。

 静岡県清酒鑑評会は全国の審査基準と違い、静岡独自の基準を持っています。
 極端に言いますと、審査はどこまで理想の静岡型に近づいているのか。

 清酒の良し悪しは香りが際立って高いことばかりではなく、味わいのきれいさ、まるさ、

 バランス、それから余韻まで含まれています。

 静岡は静岡ルールで行っています。


 今後、静岡以外の各地でそれぞれのルールに従った鑑評会が開催されていくことでしょう。

 これから全国の吟醸酒は様々な審査基準によって磨かれた素晴らしいお酒が誕生していくことでしょう。

 静岡酵母で酵母開発をリードしてきた静岡県。
 これからは鑑評会のありかたについてもリードしていくことでしょう。

 つまり、静岡酒の新時代は全国の新時代へとなることでしょう。


 明治の終盤にはじまった全国の鑑評会は、数年後には全国新酒鑑評会と全国清酒鑑評会に
分かれたり、灘酒のボイコットなども起こりました。

 原因は審査基準であります。
 あの時は「硬水仕込み」と「軟水仕込み」のお酒の対決になりました。

 今は使用米で分類されてはいますが、香りのタイプの対決になってもいます。

 時代は再び繰り返されるのか?

 今後の吟醸酒から目を離せません。

 今回のさきがけは静岡からであります。


 次回は私の静岡酒三十年史の前半をお届けします。


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Posted by 丸河屋酒店 at 16:30│Comments(0)講演・講座・執筆
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